日本市場の縮小や新興国の台頭と言われるこの時代。
これら現状をもう少し詳しく見、どの様に対応していく事が必要かをご一緒に考えていく事としたいと思います。

海外展開へ問題点を考える前に

近年、連日マスコミを賑わせている訪日外国人。継続的な訪日旅行プロモーションや、円安による割安感の定着、ビザの大幅緩和、消費税免税制度の拡充等による効果などが訪日旅行者数の増加を後押しして、2015年は前年比47.1%の増加、19,737千人を超える状況となった。(日本政府観光局データより)
国別にみると、中国・香港・韓国からの来日外国人の伸びが著しい。
一般消費財を製造販売している企業や飲食店にとっては、一時期言われたような日本市場の縮小よりも訪日外国人の恩恵による拡大の方がより多くのメリットを生み出している様にも思える。
しかし、実際に日本人の人口は減少を続けている。
厚生労働省の発表によると、2040年には2010年比総人口は17%の減少、特に若年層については37%減少し、生産年齢人口は30%も減少する。

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中小企業にとっても無視できない問題

中長期的視野に立った時には無視できない現実である。
従来、大企業と中小企業・小規模事業者との間に存在した相互依存関係の下、受託加工を事業の中心にしてきた中小企業・小規模事業者は、大企業が市場から獲得してきた需要の恩恵を享受してきた。しかし、グローバル化の進展等を背景に、大企業と中小企業・小規模事業者との間の相互依存関係は希薄化している。これにより、中小企業・小規模事業者は自ら市場と向き合い、需要を獲得する必要に迫られている事は事実である。
又、円安も訪日外国人にとっては有利に働いているが、中小企業製造業にとっては、原材料費の高騰に繋がっており、利益圧迫方向に働く。
エグセクティヴリーダーの皆様は、目先に囚われる事無く、安定的に売り上げ利益の拡大を図って行くには日本国内以外の市場を視野に入れた中期戦略を立案し、実践して行く事は不可欠な要素の一つである事はお気づきの事であろう。
日本政府としてもこの様な背景を受け、インバウンド(訪日促進)だけでなく、アウトバウンド(海外進出)にも力を入れ各種施策、補助金制度等を拡充させている。
参考サイト
JICA http://www.jica.go.jp/sme_support/
中小企業庁 http://www.chusho.meti.go.jp/keiei/kokusai/

中小企業の海外進出の実態とは?

「中小企業白書 2012 年版」によれば、全国の中小製造業のうち、輸出を行う企業は2.8%(2009 年)、海外直接投資を行う企業は 1.0%に過ぎない。
之は何故か?
同中小企業白書によると「販売先の確保」と「信頼できる提携先、アドバイザーの確保」が最大の課題として取り上げられている。

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確かに言うまでも無く「信頼のおける安定的に取引できる販売先」の開拓が最大の課題である。如何に、この課題と真摯に向き合い、解決策を模索し実践していけるか?が最大のテーマである。
その為に、多くの行政機関の支援や海外アドバイザー、コンサルタント企業などが存在している。しかし、問題の本質は其処なのだろうか?
私は、情報の多さが海外への展開を鈍らせている要因の一つと言えるのではないかと考えている。
私が前職で海外販売の為に展開を開始したのは、1990年。当時は正直まずアメリカしかなかった。日本はまだまだ先進国への販売を強化する、との考えで選択肢は多くなかったのである。
現在は、どうだろうか?
新興国の台頭と一口に言ってもその国々は多岐に渡る。TPP参加国が今後大きなターゲット国になると言っても、アジア(ベトナム・シンガポール・ブルネイ・マレーシア)、オセアニア(オーストラリア・ニュージーランド)北米(カナダ・アメリカ)、南米(メキシコ・ペルー・チリ)と日本で12カ国になる。上記に従来からのBRICsを加えるとそれこそ世界中になってしまう。
つまり、世界中が販売のポテンシャルを持っている、言い換えれば、どの国にどの様な商品が受け入れられるのかをどの様に見つけていくのか?自社の商品とのマッチングが良いのはどの国だろうか?ある意味、全く分からないし、極端に言えば何処でも可能性が有る。
選択肢が多すぎるのである。悪い事ではない。しかし、迷わせるのである。結果、遅くなり遅れていく。
この素晴らしい環境を、どの様に活かして行くか!から考えていく必要が有る事に着目すべきである。

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中小企業の海外展開への真の問題点は何か

『従来、大企業と中小企業・小規模事業者との間に存在した相互依存関係の下、受託加工を事業の中心にしてきた中小企業・小規模事業者は、大企業が市場から獲得してきた需要の恩恵を享受してきた。』と前述した。これは、2015年度版中小企業白書からの言葉の抜粋である。
この事は何を意味するのか?
極論すれば、『己が無くとも良かった。』のである。
しかし、海外への販売を考えて行く場合の最も大切な事は「己の考え」である。
新興国への取り組みを考えた場合、彼らは日本よりも言うまでも無く後進国であり、言い換えれば自分達よりも弱い立場の人たちである。
従来の受託関係の中での自分が弱い立場での物事の考え方や、仕事の進め方とは全く反対の立場になる事を覚悟しなければならない。
若しくは、従来の日本での大企業に代わる大企業を他の国で開拓すると言う手段は当然存在する。
この考えで行くならば、それこそ新興国との低賃金化路線での競争を如何に勝ち抜くかを考える事になる。
中小企業の海外展開への問題点とは、当にこの選択をする事、その覚悟を持つ事が出来ない事が問題ではないだろうか。
確かに、2大課題として良く下記内容が言われる。
①ITリテラシ-の不足・言語対応力の不足
少ない予算で海外進出を考えた場合、インターネットの活用は非常に有効な手段となるが、少なくとも、英語を自由に操り、パーソナルコンピューターの使用・オフィスと言われるソフトウエア・メール等を操るIT関連技量が必要だが、中小企業・小規模事業者の中にはこれら能力を持つ人材が不足している事。
②海外ビジネス習慣への知識・経験の不足
地域・国によってビジネスにおける習慣は異なり、特に契約の内容、契約不履行に伴う対処の方法など、経験が不可欠な部分もあり習得に時間が掛かる為、これらの能力を持つ人材が不足している事。
上記課題解決の打ち手を打つ事は大切である。しかし、打ち手は明らかに存在するのである。
存在しないモノは何か?に着目し自ら答えを出して行く事に注力する必要が有る。

エグゼクティヴリーダーの皆様は如何お考えだろうか?

輸出を行う中小企業は未だ3%程度にしか過ぎない。しかし、世界は大きくその市場の可能性は計り知れない。
『覚悟』を持つという選択肢にチャレンジしてみては如何だろう。