マクロから見るイスラム市場と海外展開

昨今、新聞等で「イスラム市場」という言葉を目にする機会が多くなりました。そもそも、「イスラム市場」って何?という素朴な疑問に対して、お答えしていきます。私達はイスラム圏であるアラブ首長国連邦ドバイに現地拠点を設け、現地パートナーと共に活動しています。その経験とデータからお伝えをしていきます。

イスラム諸国経済の現状

「イスラム市場」とは書いて字のごとく、イスラム教を主な宗教とする国々の市場のことを指します。
イスラム諸国とはどのような国があるのでしょうか。
表1は、イスラム教徒(ムスリム)が多く居住している国々を1位から20位まで示したものです。
この表から、イスラム教徒数を見ると、インドネシア、パキスタン、インドといったアジアの国々が上位を占めています。次に注目していただきたいポイントが、各国の一人当たり名目GDPです。
一般的に中間層が自動車を購入できる目安がUSD3,000と言われていますが、ほとんどの国々のGDPがUSD3,000に届いていない事がわかります。
イスラム教徒数だけから見た「イスラム市場」は、まだまだ貧しい国々が多く、経済状況的に厳しいと言わざるを得ないと思われます。
インドネシアやマレーシアを市場として選ばれる日系企業様が多いのは、人口が多く、GDPもUSD3,000を超えているためです。
表1

MENA市場の魅力

イスラム教といえば、中東をイメージされる方も多いのではないでしょうか?
ここでMENA市場についてご紹介させていただきます。
ポストBRICsとして注目されているMENAマーケットは、25の国と地域から構成されており、中東のMiddle East、北アフリカのNorth Africaそれぞれの頭文字から「MENA」という名称がついています。
表2は、表1と同じデータをGDPの多い順から並べています。
GDPがUSD3,000を超える15か国のうち11か国がMENAの国々です。
続いて表3をご覧ください。これは、湾岸諸国と呼ばれる国々を抽出したものです。
カタール、クウェート、UAEは人口こそ多くありませんが、豊富な石油資源により、一人当たりのGDPは日本と比較しても高く、購買力を考えると有望な市場と言うことが出来ます。
表2
表3

MENAのショーケースとして地位を確立するドバイ

MENA市場の特徴として、1か国あたりの市場規模が小さく、各国のインフラが整っていないという状況があります。
しかし、UAEは湾岸諸国の中において、人口、GDPの点においてバランスが取れており、しかもドバイはMENA各国のビジネスの貿易中継地点として、また、新都市として各国企業を誘致する施策を積極的に展開しています。そのため各国のバイヤーや商品が集まる超国際都市が形成されています。

1, インフラの整備

航空網を整備し、世界140都市以上の地域にダイレクトアクセスが可能。
生活インフラはもちろん、インターネットを含めた経済インフラが整っており、どこの国から来てもビジネスができる環境。

2, わかりやすい法整備

海外からのビジネスマンにも分かりやりやすい法整備。

等々。
これらの理由から、ドバイはUAE市場のみならず中東の玄関口、世界の玄関口として注目を集め、2020年には万博の開催も決定しています。今後も、ドバイ政府は「ヒトとカネ」を集め、超国際都市のさらなる発展を図る施策を多く打っていくと言われています。

以上のようなことから、イスラム市場参入を考えた場合、MENAしかもドバイを拠点に展開することが最も有益な方法であると言えます。

(表1~3参照元:Mapping the Global Muslim Population, October 2009)