改めて、「海外進出」そして「海外販売」「海外販路開拓」について考えています

「海外進出」として最初に思い浮かぶのは、海外での生産でしょうか。中国を始めとしてアセアン諸国へ安い労働量を求めて日本の産業界で多くの企業が工場を海外に移して「海外進出」を果たしています。また、それに伴って流通業者・商社などが「海外進出」を果たし、現地での生産から日系企業への納入ルートを構築し、中間製品・最終製品を日本への輸入、また他国への輸出を実現して来ています。こう言った構図の力(流れ)は一時期と比べて弱まって来ているのが現状でしょうか。「産業の空洞化」などと一昔前は大いに叫ばれました、が最近は当たり前になったのかあまり耳にしなくなりました。

新興国の台頭

新興国の定義も非常に難しいですが、少々強引に「賃金が安い国」(何に比べてか?などこの定義も難しいが・・)と位置付けてみましょう。「海外進出」「海外販売」を考えるときに、今まで「安い労働力」と見ていた地域や国々は、その労働力を求めて多くの先進国と言われる国々の企業が参入し産業が発展していく。と同時に時間軸が遅れながら人々の収入は高くなり豊かになっていく。中間所得者の増加、となって表れてきています。中国等はご存知のように今や「安い労働力」と言ったような単純な考えでは捉えられなく、どちらかと言うと「高い購買力」といった見方の方が強くなってきているように思われます(地域格差はありますが)。こう言った見方は新興国と言われる各国において同様な事柄が起こるわけです。

「海外販売」という「海外進出」

非常に荒っぽい表現になりますが、上記の様に世界経済が動いていくという事は、購買力を持った人々が数多く生み出されていく事を意味しています。非常に単純に言ってしまえば、そう言った新しい購買力に対して「販売」を仕掛けていく事が「海外販売」という事になります。しかし中々具体論としては、そう単純なものではありません、ね。
文化・風習・言葉も違いますし、各国の法律も異なり、関税の問題もあり、輸送費用も多くかかる。日本国内で「お隣の県で新しく商売を始めよう」と言ったような具合で進められないもの事実です(正直、この事だけでも大変ですが)。

中々、一足飛びには行かないのが現実しょう。

何もしなくても良いのだろうか?

問題は、このような一足飛びに行かない、むず痒い状況ではある、だから何もしなくても良いか? という事です。
皆さんは、どの様にお考えでしょうか?・・・・・

やはり、何らかのアクションは取る事が必要だと思いませんか?

海外販路開拓の為に取り組む事、鍵は3C分析!

何か新しい事に取り組む時、避けて通る事のできない問題点の一つにコスト問題が挙げられます。そこで今回は海外へ商品を販売する際のコスト削減にもつながる「3C分析」と呼ばれる事業環境分析について詳しく見ていきたいと思います。

3C分析ってそもそも何?

「3C分析」とは企業や事業を取り巻く環境を分析する為に使用されるフレームワークの事を指します。「3C」とは、「Customer(=市場や顧客)」「Competitor(=競合)」「Company(=自社)」の三つの総称の事で、これら三つの視点から企業の環境分析を行います。まず一番目のCustomer分析では、市場の成長性等から顧客を知り、そのニーズを知る事です。二番目のCompetitor分析では、競合相手や他社製品・サービスの特性を知り、競争状況の現状や競争他社を知ります。最後のCompany分析では自社の製品特性や技術力、市場でのポジション等から、自社の経営資源を分析します。

3C分析から導かれる戦略とは?

これら三つの分析は、市場と競合の分析から導かれるKFS(Key Factors for Success=業界で成功するための要因)と、自社の分析結果とのギャップを埋める為の、具体的な戦略を立てる事に繋がります。この分析の際に重要なのは、「顧客」と「競合」、「自社」、それぞれのコスト構造についても考慮すること。それぞれの経済性にしっかり踏み込んで分析する事によって、より実践的な戦略に繋げることができます。顧客が変われば競合が変わり、競合が変われば自社製品に対する戦略も変わります。加えて「顧客」と「競合」、「自社」の、どれを中心に据えるのかによって、導き出される戦略は変化します。3C分析のような手法を用いることで、無駄を減らす事が出来、海外展開におけるコスト削減にも繋がります。

海外販路開拓に対するリスクマネジメント

海外に事業展開する際に必要な事の一つがリスクマネジメントです。中小機構監修の中小企業国際化支援サポートの「海外進出中小企業におけるリスクマネジメント」を参照しながら、海外進出に役立つリスクマネジメントを学んでいきましょう。

経営におけるリスクとは?

まずリスクマネジメントとはなにか、を説明する前に経営におけるリスクとは何か定義してみましょう。経済産業省が発表したレポート「リスク新時代の内部統制」によると、リスクを「事象発生の不確実性」と定義し、「損失等発生の危険性のみならず、新規事業進出による利益又は損失の発生可能性等も含む」としています。リスクにも大きく分けて二つあり、一つは経営上の戦略的意思決定に関係するリスクを指す「事業機会に関するリスク」、もう一つは通常の事業活動をする中で損失が発生するリスクを指す「事業活動の遂行に関連するリスク」です。

経営におけるリスクマネジメントの定義

では経営におけるリスクの定義がはっきりした所でリスクマネジメントの定義について見ていきたいと思います。前出の経済産業省のレポートには「リスクマネジメントとは企業の価値を維持・増大する為に、企業が経営を行っていく上で事業に関連する内外の様々なリスクを適切に管理する事」と記されています。具体的なリスクマネジメントのステップとしては、まずリスクの発見・特定→リスクの算定(計算)→リスクの評価→リスク対策の選択(移転、回避、低減、保有等)→残留リスクの評価→リスクの対応方針及び対策のモニタリングと是正、そして最後にリスクマネジメントの有効性評価と是正。これらを使いPDCAサイクルと呼ばれる経営管理サイクルを回していく事をリスクマネジメントと言います。

内部統制、4つの目的

次にリスクマネジメントの手段を見てみましょう。企業経営のリスクマネジメントを行う際、重要な役割を果たす手法に「内部統制」があります。金融庁の「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準」によると、「内部統制とは、4つの目的が達成されるという合理的な保証を得るために、業務に組み込まれ、組織内の全ての者によって遂行されるプロセス」と記してあります。4つのプロセス(目的)とは「業務の有効性・効率性」「財務報告の信頼性の確保」「コンプライアンス(法令厳守)の確保」「資産の保全」です。この4つの目的をしっかり見据え、リスクマネジメントを行う事が大切です。

アジア諸国をはじめとする海外は、ビジネスの新規開拓としてとても魅力的なのは事実ですが、必ずしも成功が約束されている訳ではありません。海外販路開拓を成功させるためには事前準備の一環としてリスクマネジメントを行う事が鍵となってきます。