中小企業による海外販路開拓の必要性

大企業だけでなく中小企業も海外販路開拓の必要性を迫られている現在、何故中小企業は海外進出を迫られているのか、今回は中小企業が国内だけで市場展開を行い続けた場合のデメリットを考えながら「海外販路開拓の必要性」について見ていきたいと思います。

超高齢化社会による日本市場の縮小

まずは日本国内市場縮小の原因について見ていきましょう。現在消費性向や嗜好の変化に伴い、モノが売れなくなり日本国内市場が明らかに縮小してきている今、その明らかな原因としてGlobal Study ASIAが挙げているのは「超高齢化時代」です。総務省統計局が2013年9月に発表した日本国民全体の高齢者比率はなんと25%で、日本国民の四人に一人が高齢者であるのが現状です。加えて国立社会保障・人口問題研究所の人口推計によると、日本の人口は2025年に1億1,927万人、2035年には1億1,068万人に、さらに2046年には1億人を割り込み、2055年には8,993万人になると予想されます。人口減少は少しずつ、しかし確実に進行している事がわかります。

利益率の保身による日本市場の縮小

Global Study ASIAによると日本企業は「売り上げ至上主義」から、「利益率確保」を重視する方向にシフトしているようです。利益率確保を重視するようになった企業は不採算店舗、部門、路線をカットして、その差額で海外へ販路を拡大しています。また昨今、多くの企業が給与計算やデータ入力といったバックオフィス機能を海外に移しています。IT化とグローバル化の進展により、国内から出ていく仕事は相当な数にのぼると同社は予想しています。日本市場が縮小する中で中小企業が生き残っていくには国内での需要を強固に確立するか、海外市場へ販路開拓を行うかの二択だと言っても過言ではないでしょう。

「今」すべき事

中小企業庁の調べによると、海外展開する中小企業は、国内市場では十分に利用されない自社の強みを海外市場で発揮する事により、国内事業を活性化している事例が多くあります。確かに海外進出にはリスクや乗り越えなければならない障壁等が数多く存在しますが、日本の国内市場の縮小の現状を踏まえ、出てくる課題やリスクを見極めながら海外進出に取り組む事が大切です。

日系企業における海外販路開拓の現状

昨今「海外販路開拓」「海外進出」等の言葉が昔に比べて身近になり、海外市場の利益率が増加し、中小企業にとって無視する事のできない急速なグローバル化の波が来ています。

日本企業の海外展開状況

中小企業庁の「企業間関係実態調査」によると、海外拠点の有無を大企業、中小企業別に見ると、海外展開している大企業は全体の52%、中小企業はたった6%です。このことから海外進出を行っている日本企業は大企業がほとんどであるという事が言えます。そしてそれらの企業が拠点を設置している国や地域はアジア地域への設置が6割を超えており、主な拠点設置先の国は、中国、アメリカ、タイ、香港、シンガポールとなっています。

海外販路開拓、製造業がトップ

更に海外進出している企業を業種別に見ると、製造業が67.9%、非製造業が32.1%です。個別には卸売業が 22.8%で最も多く、輸送機器が22.6%、一般機器 8.6%、金属製品5.2%、電気機器4.9%の順でした。

中小企業の海外展開、ある製造会社の場合

中国への海外展開に成功した中小企業の例として、とある製造会社の事業例を見てみましょう。それは主に電気機械器具製造を行っている会社で、中国にある複数の拠点での製品の製造に加え、現地企業や日系企業への販売を行っています。海外への進出は労働力の確保と、国内取引先の海外拠点のそばで生産、製品供給を行うという意図の元1990年に行われました。国内の従業員数88名に対し海外の従業員数は1,020名となっており、1年間の売上高は420万USドルで、黒字、累損無しとなっています。

リスクの多い海外進出で成功を収めているその会社から海外展開企業へのアドバイスとして、海外では契約の概念が日本と異なる為、疑義がおこりそうなことについては綿密な契約を締結し、曖昧な方が得策の場合にはあえて契約を取り交わさないなど状況により使い分けるべきであること。また出資比率に関係なく最終決裁権を日本側で保持することで中国側の経営面での不合理な干渉を防ぐようにしており、決裁権限の明確な区分が重要である、との事です。先駆者のアドバイスを参考にしつつ自社の方針を定め海外展開する事が成功へと繋がります。

海外販路開拓における中小企業の問題点

問題点の提示にあたって、まず始めに「大企業」と「中小企業」の定義を確認してみましょう。中小企業庁によると製造業においての「中小企業」の定義は「資本金の額又は出資の総額が3億円以下の会社又は常時使用する従業員の数が300人以下の会社及び個人」となっています。更に中小企業は、日本の421万企業のうち99.7%を占めており、大企業は全体のたった0.3%となります。

海外展開できている中小企業は少数

では日本の大部分を占める中小企業の海外展開についての現状を見ていきます。日本政策金融公庫が実施した「中小企業の海外進出に関するアンケート調査」によると、海外進出をしていない、と回答した中小企業が全体の72.4%にも上りました。ではなぜ海外進出を行わないのでしょうか。海外展開への意欲が低いからでしょうか。

輸出拡大へ意欲的、自社製品にも自信あり

日本貿易復興機構(ジェトロ)が行った「2013年度日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査」によると今後の輸出方針は、「さらに拡大を図る」企業の割合が増加し77.2%になっており、輸出拡大意欲は中小企業でもより鮮明になっています。さらに中小企業庁の調査によると、「国際化と企業活動に関するアンケート」において、「自社製品に自信を持っており、海外で販売しようと考えた」と答えた中小製造業社は38%で、海外進出への製品に対する自信は他の理由に比べ高くなりました。

経営資源不足の解決が課題

一方で、ジェトロの「海外進出しない主な理由」調査の結果、半数(50.9%)の中小製造業社が「海外展開における経営資源(資金、人材、競争力)がない」という理由を挙げました。つまり中小企業は自社の製品・技術に自信があり、海外への販路開拓にも意欲的であるにも関わらず、「資金・人材・競争力」の不足によって二の足を踏んでいる状態であるという事です。

中小企業の海外販路開拓において、経営資源の不足を解決し、優れた製品・技術をより上手に海外へアピールする事が今後の課題となります。